声優は声を使った「役者」です。
とはいえ、もちろん台本が存在するため、プロの声優は台本からどんなストーリーなのか?
どんなキャラクターがどんな感情で言葉を発しているのか?
これらを的確に文字から読み取らなければいけません。
そのため、台本の読解力がなければ声を使ったお芝居の出来は微妙なものに。
声優は声だけで演じないといけないので、声に乗せる情報量は他の俳優などよりも情報量が多めです。
そのため声優が行う台本の読解力は、舞台やドラマの台本を読む以上に鍛えないといけないポイントになります。
では、声優に必要な読解力についてお話します!
声優は演技する上で読解力がカギになる!
声だけで表現する声優は、いかに早く台本を読み解くか、仕事の効率化では重要です。
しかし残念ながら、本当の意味での読解力を理解していない声優志望者が多く、声優になる上で大きな障害となっているなと声優をやっていて感じました。
演技している「つもり」になっている・・・
読解力を理解していない声優志望者は、演技しているつもりになっています。
自分では台本通りに演じているつもりでも、きちんと読み解くと実は全く違うお芝居をしなければいけなかったなんてこともあるのです。
そこで、例題をご紹介します。
(学校の教室にて)
主人公の男の子(女の子)「おはよう」
クラスメイトの女の子「…おはよう」
あなたが主人公役だった時、「おはよう」のセリフはどんな言い方が正解だと思いますか?明るい?それともローテンションで?
私だったら、「分からない」と答えます。
なんだ。結局わからないのかよ。
と思うかもしれませんが、それでいいのです。
これの情報だけだと、主人公の性格や背景が読み取れないからです。
今の情報だけで「おはよう」の言い方を決めてしまった人は、残念ですが声優に必要な読解力が身に付けているとはいえないでしょう。
訓練の必要があります。
読解力があるプロの声優は色んな方向に深堀する
読解力があるプロの声優は、先ほどの例文をどのように読み解こうとするのでしょうか。
私の場合はまず、主人公と相手役の女の子のそれぞれの性格や体格、どんな関係性なのかを確認します。
主要キャラクターなら、台本とは別にキャラクター設定が渡されるはずなので、そこでどんなキャラクターなのか理解。
もし端役でキャラクター設定が無い場合は、台本のストーリーを一通り読んで、一体どんなシーンでどんな感情で発言しているのか想像しながら演技をします。
またアニメやゲームはファンタジー物も多く、自分の想像力をフル稼働しながら演じることが多いです。
例えば空を飛んだり、魔物と戦ったりする時、どんな体制でどんな感情で動いているのか?など。
そして、読解力があるプロの声優は、何通りかのシチュエーションを想定します。
例えば相手が「…おはよう」と言うセリフの場合、「…」が付いていますから、もしかしたらなにか気まずい出来事があったのかも。とか。
その原因が喧嘩だとしたら、自分はどんな風に「おはよう」と声をかけたらいいのか?
そもそもどれくらいの距離感で言っているのか?目の前にいるのと教室の端と端にいるのとでは、声の大きさも変わってきます。
相手との距離が離れていたとして、キャラクターの性格がおとなしかったら教室内で大声を出すのもおかしいですよね?
少し長くなりましたが、たった2つのセリフだけでもここまで深堀する必要があります。
正直もっと深堀しても良いくらいです。
読解力がないと起こる声優のデメリット
読解力がない場合、現場ではどんなデメリットが起こるのかを説明していきます。
シーンの情景が理解できず浮いた芝居になる
「読解力がない=シーンの情景が理解できない」ということなので、どんな風にお芝居をするべきなのかわからなくなります。
そのため、なんとなく雰囲気で演技してしまうのです。
そして気が付かない間に、自分だけが浮いた芝居をして現場で悪目立ちしてしまった…なんてこともあります。
相手との掛け合いができない
読解力がないと、相手とどんなシチュエーションでどんな感情で会話しているのか分かりません。
また、「セリフを噛まないようにしなきゃ」「頑張って演じなきゃ」と自分のことで精いっぱいになると、相手の演技を見る余裕もなくなります。
結果として、相手との掛け合いゼリフが不成立に。お互いの距離感や感情がバラバラなので、会話っぽく聞こえなくなってしまうでしょう。
「練習してきていない」というレッテルを貼られる
例え寝る間も惜しんで練習したとしても、本番で間違ったお芝居をしてしまうと、「この人は練習してこなかったな」というダメなレッテルが貼られてしまいます。
また、「読解力がない=声優としてのスキルがない」ということなので、マネージャーからも仕事を振ってもらえなくなります。
専門学校や養成所では詳しく教えてくれない
これで、声優に必要な読解力の重要性を理解していただけたかと思います。
とはいえ専門学校や養成所では、読解力についてどう練習して学んでいくのでしょう?
私もこの記事を書いていて、声優志望者時代のことを振り返ってみたのですが、台本の読解力について教わることは、ほとんどありませんでした。
ただ台本が渡されて、自分が思う演技をし、ダメ出しをされるだけ。
台本の中身を読み取る授業なんてありません。要は自分の力で練習して読解力を上げていくしかないんです。
声優に必要な読解力を上げる方法6選
専門や養成所で講師に言われて以下のように悩むことになると思います。
「レッスンで自分の演技は薄っぺらいと言われた」
「でもどうすれば良いのか分からない」
「レッスンでも教えてくれない」などなど。
自力で台本の読解力を上げろなんて、なかなか酷ですよね。しかし、ポイントさえ掴んで練習回数を重ねれば読解力を上げることは出来ます。
そこでここからは、声優に必要な読解力を上げる方法をご紹介します!
【1】映像を見ずに小説感覚で台本を読む
読解力が上がらない大きな原因のひとつとして、台本を渡されてすぐに映像(Vチェック)をしてしまうことが考えられます。
どのタイミングでセリフを言うのかタイムチェックをしなければいけないですし、どんな作品なのかいち早く映像は見たいですよね。
しかし映像を最初に見てしまうと、キャラクターの動きに流されてしまい、感情や情景まで読み解くことができません。
これが、演技している「つもり」になる根本的な原因となっているのです。
それを事前に防ぐためには、映像を見ずに台本を熟読することから始めましょう。その際は声優視点で読むのではなく、小説感覚で読むようにします。
声優を目指す皆さんは、ライトノベルが好きな人も多いのではないでしょうか?イメージはそんな感じです。
まずは台本を1人の読者として楽しみながら読むことが大事です。
【2】キャラクターの体格や性格を理解する
台本を読み込む前に、各キャラクターについて理解できているかが大前提になってきます。そこで私が毎回注目しているのが、「体格」と「性格」の2点です。
「性格」を理解しなければいけないのはなんとなくわかると思いますが、では「体格」を理解する理由は一体なぜなのでしょうか?
全く同じ性格のキャラクターでも、細い人と太っている人だと喋り方が違ってきます。もっと細かいことをいうと、胸のある人とない人でも話し方が違います。
実際監督からも、「もっと胸が大きい女の子が言っているイメージで」「もっと筋肉がついている喋り方で」など、体格を意識するような要求をされることが多いです。
【3】1つのセリフの背景を想像する
セリフの背景といっても、なんのことを指しているのか分からない人もいるでしょう。最初に出した例文を元に説明していきます。
(学校の教室にて)
主人公の男の子(女の子)「おはよう」
クラスメイトの女の子「…おはよう」
文章を見る限り、学校の教室のシーンなのが分かります。そして「おはよう」と言っているので、おそらく時間帯は朝です。
では教室に入ってどれくらい人がいるのでしょうか。たくさん人数がいたら賑やかですし、数人しかいないようなら静かです。
先生がいたとすれば、朝のHRが始まっているので、おそらく主人公は遅刻しているでしょう。
そしてもし遅刻している設定だった場合、周りのクラスメイトからの視線を感じ、先生も怪訝な顔をしています。ちょっと気まずい雰囲気ですよね。
これが「セリフの背景」です。どんなシチュエーションで、どんな気持ちで言うセリフなのか想像をしてください。先ほどお話した「深堀する作業」がここで必要になります。
【4】分からない用語は必ず調べる
刑事ものや医療ものは、専門用語などの難しい単語がたくさん出てきます。
時には分からない単語が出てくることもあるでしょうが、なんとなくお芝居してしまうのはNG。分からない用語は、必ず事前に調べる癖をつけましょう。
なんとなく言った専門用語が、実はとても重要なキーワードだった…なんてことも少なくありません。
【5】ストーリーが読み取れない人はイラスト化するのもあり
台本を読み返したところで、頭の中でシーンの絵が浮かび上がらない人もいますよね。その場合は、紙にセリフに沿ってイラストを描く方法があります。
イラストを描くことで、どんな動きをしてどんな表情で言っているのかが明確になりますから、絵を描くのが得意な人におすすめです。
【6】文章を読み慣れしていない人は国語の教科書を読むことから
何回台本を読み返しても台本の意図が掴めない人は、そもそも文章を読み慣れていない可能性があります。
これでは、シーンの想像なんてできませんし、読解力なんて上がりません。
文章を読むことに慣れるために、中学・高校の国語の教科書を読むようにしましょう。
最初は声を出しても構わないので、文章の内容を理解することを意識して読んでください。
もし手っ取り早く読解力をあげたい場合には、この書籍を読むと吸収率が3倍違います。
演技している「つもり」はダメ!
声優は、与えられた台本の中からどれだけ背景を読み取れるかで、お芝居の上手い下手が決まります。上手いお芝居をするためには、読解力の向上は必須です。
私にとって読解力とは、ただ文章を読んで理解するだけではなく、その先の背景を想像しながら深堀していくことだと思っています。
今回はちょっと難しい内容かもしれません。しかし、読解力はそれくらい重要な部分になるのです。
演技している「つもり」にならないように、どんどん読解力を上げていきましょう!